HubSpotでエンリッチメントされたそのデータ、どこまで信頼できますか?
今回はデータを見てて「これおかしくないか?」となったデータエンリッチメントに触れたいと思います。この記事は2025年7月のニュースレターの内容に追記を加えたものになります。
HubSpotのデータエンリッチメントとは
HubSpotの有償版(Starterプラン以上)をご契約いただいている方なら全員利用できる機能の1つ、データエンリッチメント。データエンリッチメントはHubSpotが提供している「Breeze」のBreeze Intelligenceに含まれます。
このデータエンリッチメントは、コンタクト/会社オブジェクトで利用でき、レコードを作成してから情報強化をクリックすることで、会社の業種、年間売上高、従業員数、所在地、SNSアカウントのリンク、コンタクトの役割、雇用主など、40を超える属性を簡単に追加できます。
これらのデータは、コンタクトであれば会社のメールアドレスを、会社であれば会社ドメインをキーとして引っ張ってきます。
★追記(レター後に追記した内容なので記事終わりに見たほうが分かりやすいかもしれません)
ドメインをキーとして情報を付与する仕組みのため、大企業のようにグループ会社で同じドメインを利用しているケース、ホームページと連絡用のメールアドレスで異なるドメインを利用しているケースにおいて有効に機能しません。
「グループ会社のエンリッチメントを行おうとしたら親会社の情報が付与されてしまった。」「ホームページとドメインが異なるため、データが存在しなかった。」
上記のような事態になる可能性が非常に高いため、情報付与を行いたい場合は記事下で紹介したサービスのどれかを参照するのが現状だと良いと思います。
日本において不完全なエンリッチメントデータ
注意点として、コンタクトであっても個人アドレスでは行われませんし、会社であれば会社ドメインに値が入っていない場合はエンリッチメントの対象にはなりません。
また、会社ドメインが入っているからといっても、HubSpot側にデータがなければ付与もされません。そしてそのHubSpotが持っているデータが問題です。
このエンリッチメントデータは、過去HubSpotが買収したClearbitとHubSpot独自のAIなどが組み合わさったものになります。特にClearbitはアメリカで企業データを販売していた会社ですので、やはりそのデータはアメリカが主になります。日本の中小企業などのデータは保有していないことが多いです。
また保有していないだけならまだいいですが、エンリッチメントされたデータそれ自体が古い・問題があるケースもいくつか見受けられました。
例えば、CyberAgent(デモデータに入ってた中で分かりやすそうな例だと思っただけで、特に深い意味はありません)。
画像の中では、従業員数5,282名、年間収益 $2.77億となっていますが、2024年9月30日時点の最新の公式発表によると、サイバーエージェントの連結従業員数は7,720人、2025年9月期の通期連結業績予想では、売上高は8,200億円となる見込みとのこと(Gemini調べ 2025/07)。
その他のデータで言うと、会社の説明・住所が英語だったり、都道府県が地域コード(13)になっています。他の企業においても同様の結果が出ており、国内の企業に関して、一部のHubSpotの会社エンリッチメントデータは役に立たないと言えます。一部としているのは、
例えば業種はHubSpotのCRM上で言語が日本語であれば、日本語表記になっていますし、郵便番号やSNSアカウントは適切に入っているように見えるからです(ように見えるとしたのは全てを把握しているわけではないためです)。なので使えるデータを取捨選択・限定して、会社の情報強化に使うのであればアリだと思います。
日本だけじゃない?海外でも話題になったデータの信頼性
日本において使えない状態のエンリッチメントデータですが、海外においてもデータに関して問題があると述べています。
その例として会社プロパティー「ウェブテクノロジー」が挙げられています。ウェブテクノロジーは、HubSpotが標準で用意しているプロパティーで、名前の通り、会社または組織が使用しているウェブテクノロジーを調査し、表示してくれます。
ターゲットアカウントのウェブテクノロジーを特定することで、アウトリーチの精度を高める・パーソナライズされたメッセージを送るのに役立てるなどが利用方法として想定されています。
有名なツールとして、私も使っているのがwappalyzerです。私の場合は、HubSpotの購入者の興味関心(バイヤーインテント)で自動取得された会社がリアルタイムでどんなウェブテクノロジーを使っているのかを見るためにChromeの拡張機能を入れています。
このような企業のウェブテクノロジーを調査する機能・ツールの多くはWebサイトのスクレイピングから来ているものです。そのため、どの時期にデータを取得したのかによって、情報の信頼性に大きく影響します。
例えば、SalesforceからHubSpotに切り替えている最中の企業をスクレイピングした場合、SalesforceとHubSpotのタグがCRM上に表示されることになります。どちらを利用しているのか、外からでは判断がつきません。
そして、このデータ取得時期は私たちにはブラックボックスで、かつ時代遅れのものが多いとの意見でした。いつ取得したのか、最終更新日はいつなのか、HubSpot上で把握することができないため信頼できないという意見が多くありました。
Breeze Intelligenceのエンリッチメント機能はどう使うのが正解?
データ精度の不正確さ、更新頻度や情報の出所がブラックボックスといった事情から、現状、HubSpotのデータエンリッチメントに関しては信頼できると判断した属性だけを使用し、その他のデータは外部から持ってくるのが良さそうです。
海外であれば、現在Clayというサービスを頻繁に聞きますが、国内だとHubSpotと直接連携できるものはSalesNow、スピーダ、ユーソナーなどのサービスになるでしょうか。
帝国データバンクなどから直接購入して、HubSpotにインポートする方法もあります。この場合はデータの更新性という面で、都度メンテナンスが必要になります。
現状データエンリットメントを使えますよ!と言うには心配な要素が多いですが、企業データの購入というのは手が出しにくい場合もあると思います。
そんな時は、Breeze Copilotを使った情報強化のやり方もあります。
直近の企業情報を調べてきてもらったり、ワークフローで自動的に付与する。スマートプロパティーで取ってくるなど、やり方にこだわらないのであれば、こういった手法もあります。
今は待ちの時。HubSpotから大きなアップデートがあればまた共有したいと思います。他のHubSpot AIツールに関しても記事を書いているので、もしよろしければご覧ください。
- HubSpotクレジットに関する基礎知識(2025年7月執筆)
- HubSpotスマートプロパティーの作成と利用に関して
- HubSpotバイヤーインテント(購入者の興味関心)機能の活用方法
- HubSpotで年齢を管理・更新する方法


執筆者: Soma Nishioka
アユダンテ株式会社のコンテンツディレクターとしてSEOを考慮したコンテンツテーマの設計、検索ニーズを考慮した上位表示を狙う記事制作などに取り組む。その後、HubSpot Solution Partnerである株式会社100のコンサルタントとしてHubSpotの導入・運用支援を行う。運用支援の中で、インバウンドマーケティングに取り組む。
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